Morning Breeze

最初、TAMAYOさんのツイートで知ったんですよ。

どうやら入院されたようで、心配した中潟さんとのやり取りの中で「例の件も宜しく」的な話をしていて、へー中潟さん、TAMAYOさんに曲を依頼したのかー、これは面白そうだなーなんて眺めていたら数日後にその中潟さんから連絡が。
何でも、とある仕事を依頼されたものの、今は忙しくてとても一人じゃあ手に負えないから各方面に手伝ってもらっている、そこでシオダ君にも是非、との事だった。
これはもしや、TAMAYOさんと共演するチャンスなんぢゃねえかー?!と心が躍った。
ってTAMAYOさんがいたから請けたなんて事はもちろん無いんだが、K社に入って最初の一年間というもの、90分テープの片面にロストワールドを、もう片面に大魔界村を録音して会社の行き帰りに繰り返し聴いていたほど憧れていた作曲家と初めてタイトルを共にできるとなったら、そらテンションの入れ具合も変わってくるってなモンですよ。
しかも、タイトルは「フィットボクシング」って云ってたような……ってあのフィットボクシングかー?
だったら疎いオレでも知ってるぐらいの有名ゲーぢゃねえか、って思って改めて調べたら案の定、1は100万本も売れて、現行の2も90万本売れているとの事だった(けど今月ついにミリオンを突破した)。
一体どうしたんだ今年のオレわ。前回云った「ミニ四駆 超速グランプリ」といい、こうも大ヒット作に恵まれるとわー。両方とも個人的には過去イチですよ過去イチ。

早速、どんなゲームなのかをちゃんと把握しようと思ってソフトを買って、やれパンチだチョップだとやっていたら筋肉痛になって、イテエわイテくねえわで悶絶していたところへ、中潟さんから仕様書と既存の9キャラ分のムービー(この頃まだ新キャラのガイは不在だった)が送られてきた。
そこで初めて今回の参加メンバーを知ったんだが、中潟さんとTAMAYOさん以外にも、女神転生の増子津可燦さん、グラディウスの古川もとあきさんという大レジェンドの方々に囲まれちゃってんだから、芸歴32年目にしてまさかの中堅っつー立場ですよ。
それ以外にも、専門学校で一緒だったと噂の半井さん、ダライアスバースト以来の共演となる高橋コウタさん、こちらもダライアスバーストや最近のファミコン作品で何度か一緒だったヨナオさん、元タイトーで同じダライアスファミリー(云ったモン勝ち)の瓜田幸治さんとCOSIOさんが今回の共演者である事と、ゲーム内の各キャラにテーマ曲を設けるというミッションを与えられた中で、オレはヒロを担当する事が明らかになった。
ヒロってもしかして、人気抜群の花形キャラなんぢゃねえの?って思って軽くリサーチしたら、どうやら間違いないらしい。

最近はこーゆー、多くの作曲家で一曲ずつ持ち寄るタイプの作品にお呼ばれされる機会が多いけど、オレのバヤイ、作業に入る前にまず自分の役割を考えます。
例えば、チップチューンド・ロックマン8BIT MUSIC POWERの時は、作品の雰囲気とか参加メンバーをざっと見渡しつつ、オレはこの中ではベテランだしなーなんて事を考えて、ちょっと引いた位置から全体のバランスを取るというボランチ的な曲を作った。
アストロ忍者マンでは1〜3ステージ以外の全ての音を担当するという統括的な立場にあったからトップ下のポジションにいたし、8ビットリズムランドでは誰もやりたがらなくて余ったステージ曲群を片づけながらジングルや効果音もやる事になって、うわー今回は汗かきサイドバックかーなんて思いながら作業をした。
で、今回のフィットボクシング2では、オレはストライカーだな、と思って。
これはキラキラスターナイトDXの時もそうだったけど、ヒロのテーマを担当するからには最前線で点を取る役目でなくてはイカンなと。
こーゆーのって結構プレッシャーになるんじゃないかと思われそうだけど、オレはその点に関してはピンボケなんで、むしろハリキって取り掛かったんですよ。取り掛かったんですが、1曲ボツっちゃいまして。
その頃は東京オリンピックの最中で、ヒロの場合は東京をイメージした都会的な曲でも似合いそうだし、タイムリーで面白いかなーと思って作業してたんだけど、ちょっとやり過ぎたかなーという一抹の不安もまあ、あったんですね。
そしたら、デモを聴かせた中潟さんから、個人的には好きなんだけどちょっと違うかなーと云われて、デスヨネーってフツーに納得して取り下げたっつー。
その際「ベタでいいから、爽やかなメロディーの曲がいい」という助言があって、オレもB案として爽やか路線の曲もイメージしてたから、マッハで仕上げてどうにか納期に間に合ったんだけど。

K社に入社したのは、32年前のちょうど今日である。
そーんなに年月を経ておきながら今頃気づいたんだけど、オイラどうやら音楽を作るおシゴトがとっても好きらしい。
さっき云ったとおり、最初に資料として全キャラのムービー(ボイスと効果音だけ入っている)を頂いたが、実際のところ自分の担当キャラ以外のムービーなど見る必要ないのに、全部見た。
曲を納品した数日後にマスタリングが上がって、仕上がりを各自チェックするため全曲配られたが、やっぱ他の人の曲を聴くのがスゲー楽しみだったから全曲聴くのは当然なんだけど、オレは2台のMacの片方で曲を、もう片方でムービーをせーので再生するという面倒な事までして全曲堪能した。
って別に、プロである以上はこうあるべき、といったカタイ話じゃなくって、オレのバヤイ、好奇心に逸ってやってしまうんですよ。この仕事が決まった直後にフィットボクシング2を自腹で買っちゃうのもそうなんだけど。
そー云や超速グランプリの時も、作曲の依頼が来て後日打ち合わせしたいって話になった段階で、別段指示された訳でもないのにゲームを自発的にダウンロードして遊んで内容をざっくり把握して、なるほどおそらくココとココの曲を新調するんだな、という目星を粗方付けつつ疑問点を洗い出しておいたおかげで、1時間を予定してた打ち合わせがサクサク進み、先方も「あれっ?30分で終わっちゃいましたねー」と想定外な様子だった。もちろん効率よく進行させたいとは思ってたけど、それよりも、単純に好奇心が勝った事による仕込みであったのが本当のトコロである。
もしかすると、同じプロでもこーゆータイプの人ってあまり居ないんじゃないかなあ、って事に今頃気づいた。しかもここまでキャリアを積み重ねたベテランになってまでそんな事してるって、余っ程好きなんだろーなーと。
でも例えば掃除をやるのだって、めんどくせーって思ってやるよりも、キレイになる過程が楽しいーって思ってやる方が作業が細部まで行き届くじゃないっすか。そーゆー姿勢って絶対に結果に現れる部分なんで、今回もまた作品愛が炸裂した内容になったと思いマスよ。

今回の曲は「Fit Boxing 2 Workout BGM -My instructor- 」という、550円で10曲まとめてダウンロードできる追加コンテンツに含まれてるんで、早速落として自作の曲を選びつつ、今日もボディーだレバーだとやってる訳です。
ところで、「Morning Breeze」なんてベタ爽やか過ぎる曲名を付けてしまったのを少々気に掛けてたんですよ。大袈裟すぎやしないかしらんと思って。
でも10月より始まったアニメ「キミとフィットボクシング」を見てみたら、ヒロの爽やか具合が想像してたよりも遥かにエゲツなかったんで、むしろ丁度いいぐらいだったんぢゃねえかと安心した次第で。