天に任す

旧友のチャタコツ君から「マリオカートやって遊ぼうぜ」との誘いがあった。

何でも去年の末だか今年のアタマだかにWii Uを買ったんだそうで、その頃から誘いはあったんだが、お互いのタイミングが合ったのがようやく今となった次第である。
まあその前にメシでも喰いに行こうかって話になったんだが、その間はオレのハーレーダビッド息子が槍玉に挙げられた。
と云うのも、この男は以前、130万もかけたカスタムバイクを買ってすぐにイヤになって、3年ほど化石とした挙句に手放した経歴があるモンだから、オレのバイクがあまり乗られていないのを喜んで、あの化石はまだ動くのかとか、あの化石はいい加減売った方がいいなどとやたらウルサイ。
まあ確かに、オレのハーレーを見た友達はほとんど居ない。
最近はあらゆる方面で「アイツ実はハーレー持ってない説」まで浮上する始末だ。
ただ、オレは生憎チャタコツとは違ってあのバイクが大好きだから、一生乗り続けるんだと事あるごとに云い聞かせてるんだが、なかなか納得しないでいる。
いーや化石だ、いーや化石じゃねえと争いながらチャタコツの家に到着してみて、まあ呆れた。
Wii Uが梱包も解かれておらず、ビックカメラで買ったままの状態で玄関に置いてあんの。
チャタコツのヤロー、買ったはいいけど設定なんか出来っこないとハナっから決めていて、オレの参上を待ってたんだと。「社長、お願い。Wiiの設定、やって」と来た。
オレのハーレーどころか、テメエのWiiの方がよっぽど化石ぢゃねえかーと云うと「あー、オレ化石でいいよ。もお全っ然、化石でも構わない。だから、やって」
キッタネエなーテメエ。そーゆーズリイ開き直り方すんぢゃねえよナロー。

オレはWiiは持ってるけど、Uはそのとき初めて触った。
つってもまあ、両方とも勝手は似たようなモンなので、まるで任天堂の営業であるかの如く、流れるようなセッティングを披露してやりましたが、このチャタコツってのはカスタムバイクの件でも察しが付くと思うけど、何でもカタチから入りたがるオトコである。
みんなでワイワイやる姿でも想像したのか、Wiiコントローラーを4セットも揃えてあり、しかもそれぞれに充電ホルダーはあるわ、さらにマリオカート用のハンドルまで2セットも揃えてあるわ。
マリオカートのハンドルなんてしょーもないモン、すぐ不要になるぞ、何だったらオレんちのハンドル要らねえからやろか?と云ったら、どうやら店員の「マリオカートをやるならコレは必須ですよ」的な口車に乗って買ったようで、やたら憤慨してたっつー。
その後、オレは所用のため数回遊んだだけで帰る事になったが、帰りがけにチャタコツ「Wii Uをやってみたはいいけど、何かハマるほど面白いって感じがしないんだよなー」
ハイ化石ー。Wii U版ゼルダが出たら安く譲ってもらお。
つーか、Wii Uでゼルダは出るんだろか?
オレ、ゼルダは未だに大好きで、ゲーム離れが進行した今でもゼルダだけは卒業できそうにない。
2011年にWiiで出たスカイウォードを先日また引っ張り出してクリアして、その後に出てくる辛口モードっていう、ダメージ倍で回復のハートも出現しないバージョンまでクリアしたどころか、ランダムで出現するボスに回復ナシで8連勝するという、最強の盾ゲットイベントまでクリアした。
現時点で一番新しいゼルダである、3DSの神トラ2も2回クリアしているし。
あーんな素晴らしいゲームを作っちゃう任天堂さん、ホント憧れます。

実は昔、そんな憧れの任天堂に入ろうとした事がありましてん。
96年の春に「スーパーマリオRPG2」の全スタッフ募集があって、その際に応募したんです。
と云うのも、前作のマリオRPGの音楽が大好きなんだけど、それだけでは収まらないモンがあって。
K社みたいなクソ弱小スラム企業で荒んだ根性を育んでしまうと、有名なゲームを妬ましく思うのは仕方のない事で、オレだっていい舞台さえ用意してもらえれば、なんて思うのが常である。
ところが、マリオRPGに限ってはちょっと違った。
「果たしてオレに、ここまでオイシイ音楽がホントに書けるんだろか?」と思わされた。
正直、場面ごとに最適なBGMを当てはめる芸当については自信を持っているが、その得意分野においてここまで揺らぐのも珍しい事で、この時ばかりは一度同じ土俵で試してみたいと思ったモンだった。
そんなところへ、件の募集である。
まさか、アレに挑戦できる機会がホントに来るなんてー!と大興奮して、即決した。
ただ、いかんせんデモテープとして提出できる曲に、戦力不足感が否めないという心配はあった。
時代のニーズ的には、プレステサターンクオリティーの曲ぐらい提出できないとツラかったんだが、K社ではプレステサターンの仕事は阿保君に優先で回してあげて、オレは時代遅れなスーファミとかゲームボーイとか冴えないアーケードとか、そんなヨゴレ仕事ばかり片付けていたのが祟った。
そーゆー部分でやや不安なデモテープを作成し、でもコレを聴く相手もプロなんだしオレの持ち味ぐらい伝わるでしょ、と思って送ってみたんだけど、まあぁぁ返事が来ねえわ来ねえわ。
夏が過ぎ、風もとっくにあざみ倒してるっつーのにまるで音沙汰がないんで、いい加減諦めた。
実はそれまで、ゲーム業界内での転職願望ってチャンチャラ無かったんですよ。
いろんな種類の音楽を操ってみたいという欲があるせいで、K社を辞める時はゲーム以外の音楽に挑戦する時だ、と思っていたんで。
だからK社にいる時、勧誘の話も少々あったし、超有名ゲー社のサウンド募集広告もいくつか見たけど、それでも全く食指が動かなかった。
でも、そーゆー考え方は今にしてみれば、大失敗でしたね。
ヒット作に恵まれなかったコンポーザーに、将来なんて無いも同然だもん。
オレはたまたま、烈火でクソバカな音楽を作ったおかげで、ごく一部のすっげえコアな方々には支持されてる部分はあるんだが、それでも名前が売れたという次元には遥かに及ばない。
ところが、応募した翌年のある日、自宅に向かって歩いていたら、オレが送付した一式がそっくり入ってそうな巨大な封筒がポストに入り切らずに半身を晒しているのが、遠方からでも確認できた。
もうね、その瞬間にピーンと来たもんね。何を今頃落選しとんねん、と。
その後の噂で、ファイアーエムブレムか何かのチームが丸ごと、マリオRPG2のチームに決まったと聞いた。あー確かに、プロジェクトチームでの応募歓迎って書いてあったっけなーなんてぼんやり思い出しつつ。
ただ、マリオRPG2が出たという話を未だ聞いた事がないから、真偽は定かではない。

その時に任天堂に送付し(て返却され)た書類が、こないだ掃除してたら見つかった。
何と、オレが過去に担当した作品一覧なんてのがあるぢゃないっすかー。
な訳で、せっかく見つけたんでデータベース化してみたっすー。
そしてニンテン応募以降の、書類に記載されていない作品も記憶を辿って付け加えてみたんだけど、合ってるかなあ。他にもまだあったような無かったような。