大車輪期の思ひ出

こんな広告あったのかー、知らなかった。

ゲームボーイ版「ガメラ」です。これはハッキリ覚えてる。
何せ、たったの5日で全サウンドを作らされたからね。
ゲームを1本作り終えた翌週の月曜に、今日から新しいプロジェクトかああと呑気にガメラ制作チームに合流したら「オマエ、マスターUPは今週の金曜なんだぞ!」という地獄の宣告を受けまして。
K社ではサウンド制作は基本的に一人でやるもので、ファミコンやゲームボーイの場合、1タイトルにつき2ヶ月、その他16ビット以上の機種になると3ヶ月ぐらいは与えられる。とは云え、たまに緊急事態が発生して、ゲームボーイを10日(ちびまる子ちゃん3)とか、スーファミを2週間(ストバスヤロウ将)という早業もこなしてはいたが、それにしても5日は急すぎる。
慌てて企画担当から音楽と効果音のリストを貰い、イメージの擦り合わせをする。ガメラの担当者はイメージが明確という点では社内随一で、コレどーゆー音がいい?と訊くと「コレは、ピロピロリン!みたいな感じがいいですね」と具体的な答えが即座に返ってくるから、とても効率よく進んだ。
打ち合わせが終わると、プログラマー(彼もガメラを実労30日ぐらいで作ったという爆速っぷりだった)がいち早くサウンドリクエストを組むための仮データを作って渡す。そして、全部で6体でてくる怪獣の、GBにしては立派な鳴き声を試行錯誤しつつ6つ作ったところで、月曜日は終了。
火曜日に全曲分のスケッチを書く。スケッチとは云え、オレはメロディーとコード進行をその時点で完成させちゃうので、実質作曲に該当する。確か10曲とちょっとぐらいだったかな。
水、木でそれらの曲のプログラムと調整をして、金曜日の午前中に残りの効果音を仕上げたんだけど、この日は94年12月の第1金曜日で、翌日がプレステの発売日だったもんで、午後からはソニー主催の業界向けプレリリースパーティーに行って遊んでましたね。
なので、実労としては4日に近い感覚ではある。K社は10時始業だったから、金曜の午前中なんて2時間も働いてないし。これは一人で全サウンドを任された中では、もちろんオレ内最短である。

ところでこの12月から、1月末までの2ヶ月間で「ガメラ」「魔法陣グルグル」「ちびまる子ちゃんDX」というゲームボーイ3タイトルを上げさせられたんだから、K社のオレ使いの荒さと来たら。
魔法陣グルグルはクリスマスには完成させた。オレのバヤイ、原作があれば吟味してから作業に入るので、グルグルを全巻読んだらまんまとハマって、後で全巻買い揃えちゃったっつー。
K社の人達って、ドラクエみたいなゲームが作りたくてこの業界に来た派が多数であり、それはオレも同様で、RPGには生涯縁の無いオレにとってはグルグルは最もRPG臭がするタイトルだったから、好きなタイプの曲をいくつか披露できた事もあって、結構気に入っていた。
なのに、サウンドを上げるとすぐさま、まる子DXチームに合流せざるを得なかったんで、ゲーム中に組み込まれた音を開発中に確認できず、曲のリクエストがあまりにもデタラメなのを知ったのはマスターUPした後だった。あれにはただただ愕然とした。

まる子DXのマスターUPは1月末で、正月休みを挟んで15日には全サウンドを仕上げた。ガメラやグルグルよりも曲も効果音も数が多かった。
で、残り半月はデバッグと、主にテキストの監修という、サウンドとは関係ない事をやってまして。
実を云うと、音楽の次ぐらいに校正が得意なんです。誤字脱字を高確率で探知できるんで、最近でもRIKIさんの原稿やゲーム内テキストを修正した数は軽く2ケタは行ってる。
ちびまる子ちゃんシリーズをK社が初めて担当した「まる子2」の時に、デバッグで誤字を駆逐し倒し、さらに「ここのセリフ、こーゆー言い回しに変えたら文字数がこれだけ減るから、あのシーンにこーゆー文句を足すと効果的じゃね?」とか口出ししてたら、企画シナリオ担当からも「このゲームは実質、オレとシオちゃんが作った」と云われるぐらい最終調整では主力と化したんで、まる子DXでもまたソッチ方面で駆り出された次第で。

まあ、フツーに考えたら、2ヶ月で3タイトルのサウンドを一人に任せるとか、その上ゲーム全体の総仕上げの監修までやらせるってのは、どう見てもオカシな話ですけどね。
そんな、八面六臂なフル稼働をしていたK社時代であり。