オレとトーキョー

いよいよ開幕も近いって事で、FC東京との馴れ初めでも書いておきます。

FC東京の前身は1935年創部「東京ガスFC」で、1999年にFC東京として独立してJ2に参入する事になったんだけど、サッカーってのは世界的に見ても首都のクラブが強いスポーツである。
でも日本ではどーゆー訳か、それまで首都にプロのフットボールクラブが存在してなかったのです。
なので、首都東京初のプロのFCとして期待されつつスタートした訳なんだけど、その翌年の2000年には早くもJ1に昇格するという偉業を達成して、現在に至る訳です。

そのJ1に昇格した年、オレはゲーム会社を辞めていて、その年は長いこと病に伏せっていた事情もあって、家で細々と着メロとかを作っていたんです。
着メロの仕事は楽しかったですよ。10年もゲーム音楽をやってたから、そーゆー作業はチョチョイのチョイ三郎だし、他のプロが作る着メロだって当時はレベルが低かったから、オレの着メロはいつもチヤホヤされ左右衛門ってな感じだった。
療養中の小遣い稼ぎとしては理想的でしたね。体に負担無くて。元来そーゆー作業は好きだったし。
当時携帯事業に参入していたケンウッド社のある鴨居へ行った時、ふと横国(日産スタジアム)が目に入り、一緒にいた「ですぅのオッチャン」っていう御仁に「オレ、Jリーグを一度生で見たいんだよね」とふと漏らしたら「じゃあ、FC東京の試合に連れて行ってやる」って云われたのが事の始まり。

その時のオレの反応。
「エフシー東京なんて知らねえよ」
「じゃあ今から知っておけよ」
「誰か有名な人いるの?」
「いるよ、まずアマラオだろ」
「アマラオなんて知らねえよ」
「じゃあまず、アマラオから覚えろよ」

家に帰った後、ヒマだったから、何となくエフシー東京に関する情報を探ってみた。
とは云え、TVで試合なんてやらないし、仕方ないから新聞のスポーツ欄から情報を得ようとすると、得点ランキングのかなーり上の方に「ツゥット(東)」と書いてあるのを見つけた。
何だよ、いるじゃん。アマラオよりもスゴイのが。
しかもこのカタカナの読み方の微妙さと来たら、バャリース以来の快挙に違いない。
エフシー東京とツゥットに肩入れするようになったきっかけは、そんなしょーもない掴みだった。
野球と違ってサッカーは地域スポーツだから、地元を応援するのがサッカーの真の姿だと思ったし。
そんなこんなで、ようやく生観戦に漕ぎ着けたのは翌2001年。

「おっちゃん、最近メンバー表を見てもツット(云えてない)載ってないじゃん」
「オメー、ツットなんてもう居ねえよ」
「居ねえって、ツットどうしちゃったんだよ?」
「今年からツット、赤痢(浦和)行ったんだよ」
「赤痢って、ツット居なかったら、誰が得点王狙うんだよ?」
「そんなの、アマラオが狙うんだよ」

軽々しく赤痢に感染しちまい、しかも「トゥット」なんてマトモな名前に改名しやがったツゥットを見損なっていると、まだキックオフまで30分以上あるのに、相手のアピスパ福岡サポーターが向こう側のスタンドでワー!ドンドンドン!とやり出した。
しかし、相手は福岡から来ただけあって、人数なんて数える程だ。ワードンドンはいいけど、歓声が寂しい事この上ない。
それを聴いた東京サポが太鼓を担いで「聴っこえーない!聴っこえーない!」と返したのが、不覚にもオレにとっての生涯初コールとなった。
しかしこの「多摩川の両岸で石を投げ合ってケンカしてる東京と川崎の小学生」みたいなノスタルジーに、思わず郷愁を駆られたりしてね。

で、その日は見所も無く負けたんだけど、何か琴線に触れるモノがあったんでしょうね。
次の横浜FM戦にはレプリカ(ユニフォーム)とタオルマフラー着用で単身横浜へ乗り込んで、You’ll Never Walk Aloneまで歌ったんだから、オレはビギナーの頃から有望なサポだったと思いマス。
この日はアマラオが、今考えると有り得ない事なんだけど、相手GKの川口ヨシカツ君から2回もボールをかっさらってゴールした。
「ヨシカツー、トーキョー!(ドンドンドドドン!)、ヨシカツー、トーキョー!(ドンドンドドドン!)」
「♪ヨシカツー、ヨシカツー、オレ達ーのー、ヨシカツー!」
東京サポも大喜びで、思わずヨシカツいじり炸裂。やっぱりサッカーって面白いなあと実感。
そして試合終了後、誰も居なくなったピッチに向かって「♪アーマがー、トーキョーに、いーる限りー」とか歌ってたら、一旦引っ込んだアマラオがわざわざ出てきて、みんなでシェ!シェ!シェ!オォォォォォォ~をやったんだから、アマラオのファンサービスにはシビレてねい。
アマラオも去った後で、では我々も帰りましょうかって雰囲気になったんだが、それでもまだ東京サポが「♪ヨコハマー(ドドドドン!)、ヨコハマー(ドドドドン!)」とやり始めた。
わー、最後は相手にもエールを送るのかあ、東京サポってエライんだなあ、と関心してたら、
「♪シーブヤーかーら電車ーでよーんじゅっぷん、ヨコハマー(ドドドドン!)、ヨコハマー(ドドドドン!)、シーブヤーかーら電車ーでよーんじゅっぷん」
全く意味なしソングですよ。一同大爆笑。東京サポ面白えー。
その日はFC東京とアマラオだけじゃなく、東京サポの毒気にもやられてしまったんだが、過去にスポーツ観戦を数多くしてきた中でも、この日ほど幸せな気分で家路についた事は無かった。
(最後のフレーズはココのサイトのパクリですが、一度読んでみると吉です。)
まさか、わざわざ欧州まで行かなくても、最高のサッカーが近所にあったなんてね。

オレはどうも、変なところで恥ずかしがる癖がある。
好きで作曲業に就いたクセに、自作曲を人に聴かせるのが恥ずかしいという面倒なヤツだ。
でもそれ以上に、人前で泣くという事に関しては死に値するほど恥ずかしいと幼少の頃から思っていて、ケンカで負けそうになっても映画とかで感動しても身内に不幸があっても絶対泣かないという、間違った根性の使い方をしていたんですが、アマラオの東京でのラストゲームで泣き、東京のナビスコカップ初優勝でも泣いたんだから恐れ入った。