上質を知る

実は初めて新潟の姉ちゃん家に行った。

あの家、猫なんか飼ってやがるから、猫アレルギーなオレがそこに泊まる事は死を意味する。
だから今まで行く気力すら起きなかったんだが、例のラブアンドピース御一行で姉ちゃん家の近所まで新潟観光に行ったついでにチョイと小一時間ほど抜けさせてもらって、ようやく訪れる事ができたという訳だ。
ところで、姉ちゃんと下の姪ちゃん、2人揃って誕生日がGWの直近と来てる。
だからさすがに何か買って行ってやらないとダメだよなーと思ってリクエストを訊いたところ「ウチに来る途中の新発田にケンタッキーがあるから、アレとアレとアレを適量買ってきて」だって。
何でも、姉ちゃんトコは田舎すぎて、車で30分以上走らないと最寄りのケンタに行けないんだとかで、家族全員ケンタ飢えしてるんだと云う。
何とも情けない奇病だが、それはそれで助かったとばかりにケンタでしこたま買ってやった。
ところが、その後ちょっと予定が狂って、ラブアンドピースの観光に一件付き合って、さらにみんなで昼メシを喰った後で姉ちゃん家に行くという流れになったんだが、この日は暑かったんだよね。
クソ暑い車内に、ケンタを3時間も放置するという憂き目に遭った。
せっかくたらふく買ったのに、こりゃ全滅覚悟だなーと思いつつ姉ちゃん家に到着。もちろん真っ先にバースデーケンタを差し出しながら事情を説明した。
「・・・な訳でスゲー暑い車内にかなーり長い間放置しちゃったから、食べる時は慎重に、そしてちょっとでも怪しいと思ったらすぐさま捨てるよう・・・って喰ってねえで話を聞けやー!!」
ヤツら、そんなのお構いなしにガフガフ行ってんだから、野人にも程がある。
「温かい料理を温かい場所に置いといたんでしょ?だったら大丈夫だよ」だって。
さすが、熊が出るトコに住んでる連中は野性味が違う。
つーか、姪ちゃんの中でも上の子はデリケートなトコがあるものの、下の子はどこを切っても健康な養分しか出て来ないんだが、その下の子が先週胃けいれんを患って、生まれて初めて長期に渡る体調不良を訴えたんだそうだ。
昨日からやっと軽い食事が摂れるようになったとか云ってるぐらいだから、ケンタはヤバイんぢゃねえの?って思ってたんだが、家族の誰よりも多く喰って、最後の最後まで一人で黙々と喰らいながら「さっきから胃が痛くなってるんだけど、そろそろ止めた方がいいかなあ」なんて云ってるから強引に止めさせた。全く食欲バカなんだからよー。
この子、公立の大学に推薦で入ってるぐらいだから頗る賢いんだが、そこはさすが姉ちゃんの子。
根っこの部分は悲しいかなアホウである。

オレが新潟の家に行けない代わりに、姉ちゃん達は毎年東京に遊びに来る。
うちの方の水道水の激マズ具合と来たら、とても真水で飲めるレベルじゃないんでちゃんとした整水器を実家に付けてるんだが、おかげでそこそこのアルカリイオン水が飲めるようになったと満足していた折、姉ちゃん達が来たから試しにその狛江の水道水を整水した、通称コマエビアンを姪ちゃん達に飲ませてやったらマズイと云いやがった。
自分らのバカ舌を棚に上げて、何を云いやがるとその時思ったから、お返しに姉ちゃんの家の水道水を飲ませろと云ってみたところ、無茶苦茶ウメエ水が出て来たんだから参った。
姪ちゃん2人、満面のドヤ顔で「コマエビアンと比べてどお?コマエビアンより美味しいでしょ?」だって。うるせえよナロー。でも正直、完敗以外の何モンでもない。
何しろ、口当たりがまるで別物だ。
上の子は理系の出身で、以前学校の実験で水の硬度をいろいろ調べたんだそうで、硬水のエビアンは300で、南アルプスの天然水は30で、ついでに自分ちの水道水を測ったら、たったの10しか無かったらしい。
10って云ったら、通販でひっそり売ってるレベルだ。そこいらのコンビニとかで売ってるどの軟水よりも柔らかいからベラボー飲みやすい。
なるほどねー。上質を知る事は、上達への近道ですよ。
バイオリンとかをやる人達の間では常識なんだけど、いい楽器ってのはシロートが弾いても良く鳴るから、力を抜いた正しい奏法がいち早く身に付く。
それと同じで、普段からいい水ばかり飲んでる姪ちゃん達にとっては、オレの方がバカ舌だったという訳だ。参りました、ホント。お恥ずかしい限りで。

と云いつつ、腐りかけのケンタッキーを喜んでフガフガ喰ってたからなー。よくワカラン。