云っとくが加齢の兆候ではないぞ

パッシブとアクティブ、と云って分かる方は少ないと思うので一応。

エレクトリックベース(とギター)には、パッシブとアクティブという2つのタイプがある。
まあ平たく云うと、電池を内蔵してるかしてないかっつー話です。
もうチョイ深入りしますと、パッシブベースってのはただ単に、弦の振動と本体の共鳴をピックアップで拾うだけという古典的な方法なため、ボディーの大きさや材質が音質にモロ影響する。だからデカくて重い。
アクティブベースってのはプリアンプが内蔵されていて、低、中、高音などのトーンコントロールによって好みの音色を作る仕様で、ボディーの鳴りをそこまで重視しなくて済むため、スタイリッシュなシェイプのものが多い。しかも出力ゲインがデカイからエフェクターの掛かりが良く、長いケーブルを使ってもノイズが乗りにくい。現代のベースはほとんどがアクティブと云ってもいいでしょう。
パッシブの明確な利点なんて、電池を使わないぐらいじゃないかなあ。

そんなパッシブベースだから需要も無さそうだけど、意外や意外、今でも根強い人気がある。
代表格であるフェンダーの60-70’sあたりのヴィンテージはプロも憧れる一品で、あのふくよかな中低音なんかはアクティブでは決して持ち得ない魔力であり、しかもあの音ってバンドアンサンブルに良く混ざるんだコレが。
まあ、白状すると、実はここ数年、パッシブの音が無性に好きでねい。
ベーシストあるあるらしいが、歳をとるにつれて段々パッシブの音が魅力的に思えて来るみたい。そうそうオレも小さい字はもう読めないし体のどこかが常に痛くて…ってほっといてくれ。
でもフェンダーのヴィンテージなんてのはベラボー高くて、しかも個体によって当たりハズレがあるから、おいそれとは手を出せないんだが、K社に入社してベーシストを引退してからの四半世紀の間に、研究熱心な日本の工房によって、ハズレの無い個体を控え目な価格で提供できるネオヴィンテージの時代になっているのを今頃知って、思わずスイッチが入った。
早速調査すると、Bacchusっていうメーカーのは安いモデルでもイイ音が鳴っててビックリした。さらに20万超えともなると、いろんなメーカーで良作を出しており選択肢も豊富だ。
中でも、Vanzandtというメーカーのものが何だか気になった。
Vanzandtってのはテキサス州にある、ピックアップを手作りで製造している海外のメーカーなんだが、ボディーやネックは埼玉にあるPGMという工房による手作りなんだと云う。
とりあえずVanzandtとその他を弾き比べてみたくて、試奏だけするつもりで楽器屋に行ってみたら、Vanzandtって都内の楽器屋にはほとんど無いと来た。
午前中から渋谷、新宿、池袋、秋葉原と散々探し回って1本も無く、夕方になって最後に御茶ノ水に無ければもお帰ろうと思ったら、運良く中古が2本もあった。
で、弾かせてもらって、一撃でヤラレた。
もちろん、試奏だけして帰るつもりでしたよ。つもりでしたが、2本とも弾いてみたところ、ハズレ無しのネオヴィンテージとは云え、明らかに個体差があんの。一方はツマミによる音の変化は良好で、ローからハイまでイイ感じに出る。もう一方はツマミによる変化はどうにか及第点なんだが、例の魔法の中低音が思いっきり咆哮するんですよ。
都内ではただでさえ珍しいVanzandtで、しかもここまで個体差があるんだから、次にこんな当たりに巡り会うチャンスなんて果たしてあるんだろか。
って思ったら、そりゃ買うでしょーよ。即買いですよ即買い。
ところで、我が家にはベースが2本ある。そのうち1つは時々引っ張り出しちゃあちょっとは爪弾くんだが、もう1つは買ったもののイマイチ馴染めなくてほとんど弾いてない。
そこで下取りの相談をしてみたら、思ったよりいい値段で買い取ってくれそうだから、とりあえずVanzandtはカードで買ってその日に持ち帰り、後日ベース2本、しかも1本はかなり重てえハードケースに入れて、根性とか執念を隠す余裕もない体で御茶ノ水まで行ったら、苦労の甲斐あってVanzandt代もほぼ回収できた。

いざ家で音出ししてみると、人生初パッシブなんで勝手が分からない事も少々あった。
我が家にはベースアンプが無いという、ベーシストとしては貧弱なシステムでやってるため、まだVanzandtの魅力全開とは行かないんだけど、グリッサンドの時など5弦ベースかと錯覚しちゃうほど太い低音が鳴るし、強めのピッキングをするとコリッとしたハイが少々聴こえたりと、魅力の片鱗が垣間見える度にひとりニヤケ顔になってしまうっつー。
あと、フルアコのギターでも出てた現象なんだけど、アンプに繋ぐとハムノイズがやたら出た。なるほどノイズが乗りやすいとはこの事か。
でもコレはケーブルの結線を見直したら激減した。専門的に云うと、パッシブの場合は2芯をチップリングに繋ぐ以外に、シールドの網線もリングまたはスレーブに繋いでちゃんとアースしないとダメっぽい。
なるほどねー、アクティブだったら網線なんか結線しなくても問題ないもんなー。

な訳で、18歳で初めてベースを買って以来、常にアクティブベースは所有し続けてきたけど、いま30年以上ぶりにアクティブベースレスな立場となっておりま。