今日は9月11日。一年で最もテロに対して敏感な日だ。
テロなんてのはとっても卑劣なクソバカ行為であって、如何なる事情があっても絶対にあってはならん事です。
と云いつつ、うちのご先祖様は過去にテロってる人なので、ちょっと立場弱かったりします。
えー、一応云い訳をしておきますと、テロというのは何の関わりも無い民間人をも無差別に攻撃しちゃうモノだけど、ウチの場合は一人の暴君を討ち取る事に専念したものでありましてですね。
それも「憎いから斬った」という単純なモノではなく、自分が殺られないための自衛の手段でもあり、それ以上に国政を変えるべく取った行動なんであって、ホントはテロと云うよりはクーデターと云った方がしっくり来る行為なんだけど、結局大将首を取っただけで国政プランの方は一旦失敗に終わった。
そんな結果なおかげで、広く世間にはテロとして認識されてしまったんでしょう。心外だなあ。でも仕方ないか。負ければ賊軍なり。
このご先祖様、具体的に云うと、オレの5親等ばかし上の高祖父である。
もっと分かり易く云うなら、ひい、ひい、ひいお爺さんって事だ。
時代的には幕末の人で、この頃に安政の大獄っていう、井伊直弼の執る政策に反対な人はみんな処刑しちゃうぞキャンペーンがあったんだけど、当時の水戸藩ってのはそれに該当する尊王攘夷思想の総本山だったから、徹底的な弾圧を受けて藩を骨抜きにされた。
その時うちのご先祖さんも謹慎を云い渡されていて、大人しく自宅で刑を受けていたものの、ある日「オレや残りの仲間もそろそろヤベエんじゃねえのけ?」と思って朝早くに家を抜け出したら、幕府の使いがちょうど入れ違いで召し捕りにやって来たっていうから、牢獄行きをギリで回避した格好となったんだそうな。
うちの母ちゃんの若い頃までは、その謹慎中に仲間たちと交わした襲撃計画についての密書が残っていたらしい。
家に鯉が届けられて、腹を割くと中に巻物が仕込まれていて、その内容は全て、井伊を赤鬼と表記するなどの隠語で綴られ、それを一読したら文の行間に朱色の墨で返事を書いて送り返していたんだそうだ。
ただ残念ながら、今はもう無いんですがね。
と云うのも、母ちゃんが若い頃に、我が国にエイプリルフールという文化が輸入されたらしいんですよ。
エイプリルフールなんて今でこそ大したイベントではないものの、その黎明期ってのは凄まじかったらしく、毎年4月1日には国民が総ウソつきと化していたっつーぐらいの勢いだったんだとか。
そんな日だけに、当然「火事だー!」って騒いだって、みんな笑うばかりで信用してくれなかったそうで、そんなしょーもない理由で家が全焼した際に密書も灰と化しちゃったという。
ところで最近は、我が国の政変願望が強いせいか、ちょっとした幕末ブームらしい。
連続ドラマ「龍馬伝」が好評で、10月には映画「半次郎」も上映される。
ヴェネチア国際映画祭に出展中の「十三人の刺客」もかなり好評らしいし。ってこれは幕末じゃないけどね。まあ江戸時代の暴君討ち取りモノだから、ノリとしては相当近いでしょう。
そんな中、このご先祖様のお話であります「桜田門外ノ変」も10月に上映されます。
結果オーライ的ではありますが、明治維新はここから始まったと評され、世界のテロ史上で唯一、歴史的に意義の生じた例外とも云われるこの話、不思議な事に今まで表舞台に出る事などほとんど無かったんだけど、あれからちょうど150年という節目を迎えてようやくお披露目が決まった。
そんな「幕末版忠臣蔵」ですが、早速前売り券を買ったら、何とも立派なブックレットがオマケで付いてきた。
スタッフ、気合い入ってんねい。今から楽しみナリ。