オレはどうかしてしまった

最近、ランニングを始めた。

あんなに大っキライな長距離走を、だ。

長い距離をひたすら走るなんていう地味で苦しいだけな行為を、好き好んでやっているのだ。
あんなモンは、学生という弱い身分の者だけが通過儀礼的に受ける古典的迫害であるとずーっと思っていたもんだから、社会人という立場はオレにとって、マラソンをやらなくても別にいいよ権を与えてくれたも同然であって、この上ない感謝の気持ちさえ持っていた。
そんなスバラシイ社会人になったというのに、また走っているんだからオレはどうかしている。

ちょっと前に、とある結婚パーティーに出席したんですが。
K社に入って2~3年目、って事は25歳の頃なんだけど、面白半分でタキシードを買った。
20代の頃は年に数回ペースで結婚イベントにもお呼ばれされていたものの、さすがに30代ともなると活躍の場がめっきり減ってしまったタキシド君なので、これは久々にお披露目のチャンスがキタと喜んでいたら、案の定ズボンが死ぬ程苦しかったっつーか。
さすがにコレじゃマズイと思って、スリム化計画に乗り出す事にした訳です。
ただ、ジムに通うような肩肘張ったダイエットだと、きっと途中でヤんなっちゃうに違いない。
他に何か楽チンで、しかもみるみる結果が顕れてしまうような方法(所詮この程度の決意である)は無かろかと思案したけど、いつまで経っても答えが出ず、じゃあとりあえず走ってみましょうって、軽ーい気持ちで試してみたら、案外気持ちイイのコレが。
学生の頃みたく競争ノリで、しかも命令で走らされるのとは、どうやら訳が違うらしい。
どうもオレの場合は2kmを超えたあたりからランナーズハイの第一形態を迎えるらしく、そこから後がまあ楽しいわ楽しくねえわで。
高校の時は持久走大会で6km走らされるのが苦しくて心底ヤだったのに、今では6kmなんて毎日でも走れちゃうような、散歩同然の距離になってしまっている。
さすがにランナーズハイの第二形態はまだ迎えていないんだが、要はフルマラソンを走っている途中でフリーザみたいに艶っツヤな最終形態になれればいい話だから、まあ気長に待つとします。
って何て事を云ってんだろう、オレわ。
フルマラソンだなんて、ちょっと前のオレに云わせれば正気の沙汰でない。

マラソンも嫌いだったが、勉強ってのも心底キライである。
マジな話だが、学校以外の場所で自主的に勉強をした事など、今までの人生でほとんど無い。
宿題ぐらいは小学4年生までは真面目にやっていたが(所詮10分程度だし)、それ以降はそんな面倒な事をやるよりは学校で先生に怒られた方がラクだと気づいた。
高校受験の時だけは勉強した。我が家はあまりにもビンボーすぎて、都立一本でいくしか選択肢がなかったという背水的状況だったから仕方なく勉強したが、それでもせいぜい一週間ってトコだ。
一応大学受験なんて事もしてみたんだが、この時ばかりは勉強嫌いの真骨頂を発揮した。
そもそも大学なんて場所には大した興味も無いから、大学に詳しい友達に、オマエだったらココの文系がいいんじゃないかと選んでもらった学校をそのまま受けて落ちて、浪人生活に入ってみたら、我が家には予備校に行く金も無いと来た。
当然勉強に身が入る訳がなく、家で毎日毎日ベースを弾いていたらメッキリ上達してしまい、オレは悦に入っていたんだが、母はさすがに呆れ果ててしまってね。当然だけど。
そんな勉強大っ嫌いなオレがですね、まだ物理の勉強をやっていたんですよ。
バカボンのパパと同い年になってまで、ルートだのlogだのといった式を解いているなんて。
やっぱオレは最近どうかしてシマッタ~のだ。
と云ってもさすがに9ヶ月もの間、ブッ通しで勉強していた訳ではなくて、勉強したりブランクが開いたりというサイクルの中(ブランクの方が圧倒的に多いかどうかは秘密)でやってたんだけど、コイツもいよいよケリを付ける時期が来てしまって、意を決して試験に臨んでみたところ、まんまと合格しちまいまして。
その筋のプロでさえほとんど持っていないような難しい資格だけに、いざ受けてみるとチャンチャラわかんねえ問題ばっかりで弱ったんだけど、どうも当てずっぽうの神様が降臨したらしくてねい。
オレ、昔っから試験運だけは妙にイイんですよ。
あ、大学受験だけは別か。何の準備もしてなかったから落ちるべくして落ちたってのもあるけど、試験中に人生最大の胃ケイレンに見舞われて、痛くて試験どころじゃなかったもん。
最後の科目なんて白紙解答ですよ、白紙。書いたの名前だけ。そら落ちますって。
帰りのバスで、おばあちゃんにシルバーシートを譲られたんだから屈辱っすよ。

そうそう、前回触れた大型二輪も早々に取得できまして。
一ヶ月で資格を2つも取るなんていう面倒な事をやるなんて、やっぱり最近のオレは何か変だ。